世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群デジタルアーカイブス

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宗像関連古文書・史料

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文書群名 吉田ツヤ氏奉納文書
文書番号 17
文書名 鼓之秘伝抄
和暦 天正三年九月吉日
西暦 1574年 9月
本文 一、今〔金〕春のそうゐんに、観世おん阿ミ被申聞候、雪の内のはせをと申事、古人の言葉にもあらす、きやうろんにもなし、これハしきのひやうふ、又ハ扇のゑに、はせをのあかあかと有に、雪をもたせたるか面白きとてかく、是さらさらいつわりなり、雪の比ハはせをハかるゝなり、さて、いつわりとハかきたる也、大蔵九郎に観世小二郎申聞するはせをのうたひに、「おろかなる女とて」と申所〈ニ〉て、つゝミのかしら有、「うねめのましてや」と申所〈ニ〉、これおなし物也、
一、観世弥三郎と申て、大鞁の上手ありし、かやうのこと取分すくれ候由申候、幸松・延命・生一三郎・いとくなとか色々沙汰有し也、のつとのつゝミ打様有よし申、次第・一声舞の打出し各別なるを、当世の人ミな打ハ同し物なる由申、つゝミのかまへの事、右のきひすをハ、ありのとわたりにあて、左のきひすをしりのふくらにあて、声をはちすとうよりいたし、ものもの敷して、可打也、くひをなやさす直にして、かしらを打時、少下をおしつけて、心をかろく打へし、観世弥三郎殿りうと申大鞁、とりわき大事なるハ舞なり、何としてもはやくなりたかる物也、序をおろしてかろく打ハはやくなる、のすれハ、シテの舞にくゝ、鞁したてなる、所詮これらをハ拍子にハのせすして、おしたてゝ、かいまハり〱、心をしつめてはやせ者、シテもしよく心つきて、聞人も面白き由申、はや太鞁の時のつゝミ、太鞁とおなしかしらを打ハかしましき物也、うたねハ太鞁に力なし、所詮太鞁のかしらあらん時者、ときどきかしらをちかへ、太鞁のきさまん時者、手をつくして面白くいさうになるらん手を可打也、南都松の下のつゝミハ、はしめを手をつくして打へし、たうのミね、なんとニてハ、はしめハよハよハとはやすとも、後つよに可打也、其謂ハ、松の下ハ短かき物ニて、聞人はしめによしとおもへハ、末迄心ちかいぬ也、地者、万の能なかき所ニて有故に、はしめつよくうてハ、末にくたひるゝ也、別の斗なし、暮に引替、太〔大〕和かたり、いさうなるよし申、観世おんあミのとき、幸松三郎・弥三郎殿、かつらきのかもをはやさるゝくせまいに、「かつらきもおなし神かきの一体、ふんしん」と申所ニて、小鞁のかしらありしを、観世せうせい聞之、幸松殿のつゝミさかりたると仰あり、小二郎不審して、けにもとうけこふ、たいはの鞁ハ、気と心とならんを、ほんいにあてゝ打へし、
一、内の鞁ハ声を本意にあてヽ可打也、身成をよくすへし、女能にかならすうたふふしあり、其舞ひめのおミの袖見る事、聞事にまよふ心なるへし、此等の時ハ、かしら一か二ツかと、大蔵九郎に小二郎被申聞、いにしへさる沙汰有、二ツ打之、よきと申、一ツ打ハしつまりて、聞人おもしろけれとも、能に力なし、去程に、能にハ二ツ打内ニてハ、一ツ可打也、老松のはやし、女のことくにねとりニても、一々囃つヽミのゆひさきへ力を入へし、かならす力をいれんとて、手をすくめすとうて、心にさへいれんとおもへハ、おのつからいる也、ミわの囃、観世の座にハ、神楽にあらす、たゝねとりニて舞あり、其外、かつこ・しやうやうのミたれなともなし、平生の舞也、但、時の一けうにする時も有、ほんらいはなし、
一、弥三郎殿、幸松三郎にとわるゝ序の有、舞にしておろさす共、おろすへきか、又、シテのおろす時、おろしあわせへきか、シテより後におろすへきや、三ツの内にいつれそと被尋、幸松こたえていわく、三ツの内にハ、尤シテおろす時、仕合たるハ申におよハす、二ツにハ、シテより後におろしたるかよし、シテより前におろすハ、シテを成敗の儀ニて緩怠なるへし、幾度もはやくなるをゆめゆめ可囃、こすことこしてゆけ者、つめてハ一ひやうしに成なり、時々可越也、但、そとハ小町に「浄衣のはかまかいとつて」といふ所ニてかならすこす也、
一、鵜羽に舞なし、たゝねとりニてはやす、松風村雨に舞なし、ねと□□〔りに〕てはやす、かきつはたに舞なし、かやうの斗同し、
一、小鞁になかす守事あり、ひとりねならハ、つゝかくし、ちかひにあわせてたひかまへ、こゝニて大鞁の■(手)□〔よ〕り観世大夫殿・小二郎殿兄弟してうれたしなり、弥三郎殿・幸松【殿】三郎殿うたれたるとて、打てきかせらるゝ、増四郎おゐ増五郎、鞁わろきにつけて色々沙汰ありし也、
一、能中はに物きる事あり、其時、打様あり、今比の人ハ只舞のことくに打、各別なるよし申て相伝在之、

   鞁之秘伝抄
  
 天正三年九月吉日   貞辰
読み下し 省略
大意 吉田貞辰、鼓の秘伝書を写す。
紙質 斐紙
寸法(縦) cm
寸法(横) cm
備考
出典 『宗像大社文書』第3巻